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米国CAFC判決のご紹介: UNIVERSITY OF FLORIDA RESEARCH v. GENERAL ELEC. CO.
2019年03月27日
IPニュース
米国
UNIVERSITY OF FLORIDA RESEARCH v. GENERAL ELEC. CO.
判決日: 2019年2月26日
米国CAFC判決のご紹介: UNIVERSITY OF FLORIDA RESEARCH v. GENERAL ELEC. CO.
1.概要
The University of Florida Research FoundationはGeneral Electricを特許侵害を理由に提訴。地裁は、2014年のAlice v. CLS最高裁判決に基づき、「同特許のクレームは、抽象的アイデア(abstract idea)を規定し、特許的なコンセプトを規定するものではない」と判断し、「同クレームは101条に基づき不適格」、と判決。CAFCは、その判決に同意した。

2.本判決を理解するためにポイントとなるキーワード
特許法101条が規定する適格性を判断するためのAlice最高裁判決で示されたtwo stepテスト。

3.事件の背景と地裁判決
The University of Florida Research Foundation (UFRF)は、米国特許第7,062,251号の譲受人である。
同特許は、医療用ベッドの脇に設けられた医療機器から生理学データを収集し、そのデータを機器に依存しない標準フォーマットに変換し、その変換データを基にプログラムを実行し、その結果を表示する方法及びシステムを開示する。
2017年、UFRFは「General Electric (GE)は同特許を侵害する」と主張し提訴。

争点のクレームは以下の通り:
1. A method of integrating physiologic treatment data comprising the steps of:
receiving physiologic treatment data from at least two bedside machines;
converting said physiologic treatment data from a machine specific format into a machine independent format within a computing device remotely located from said bedside machines;
performing at least one programmatic action involving said machine-independent data; and
presenting results from said programmatic actions upon a bedside graphical user interface.
地裁は、同クレームの101条に基づく適格性をアリス最高裁判決で示された以下のtwo stepテストに基づき判断。

(1) Is a claim is directed to a patent-ineligible concept such as an abstract idea? (クレームは抽象的なアイデアのような特許として不適格なコンセプトを規定するか?)

(2) If so, does the claim contain an inventive concept sufficient to transform the claimed abstract idea into a patent-eligible application? (もしそうならば、その抽象的なアイデアを特許として適格な適用とするのに十分な発明性のあるコンセプトを規定しているか?)

地裁は、ステップ(1)に基づき、「争点のクレームは、データの収集、分析、操作および表示を規定するものであり、abstract idea」と判断。
地裁は、ステップ(2)に基づき、「争点のクレームは、inventive conceptを規定するものではない」と判断。
地裁は、この判断に基づき、「争点のクレームは101条に基づき不適格であり無効」と判決。

4.争点
本件のクレーム発明は、アリス最高裁判決で示されたtwo stepテストをクリアできるか。

5.CAFC判決
CAFCは、地裁の判断に同意。
同特許は、「従来、医療施設では、患者カルテのようにペンと紙の方法を使用して患者情報を取得し、情報システムに手動でその習得した情報を入力する問題を指摘し、この手動作業をコンピュータで実行する自動化」を提案する。
このように、この特許は、「従来、手動で、ベッド脇の機器でデータを収集、分析、操作及び表示していた」ことを示す。

このような、従来ペンと紙を用いて、データを収集、分析、操作及び表示していたことを、コンピュータで置き換えることは、以下のような幾つかの先例が示すようにabstract ideaである。
Intellectual Ventures v. Capital One (Fed. Cir. 2017) (holding abstract claims directed to . . . collecting, displaying, and manipulating data)
Elec. Power Grp v. Alstom (Fed. Cir. 2016) (holding abstract claims directed to collecting information, analyzing it, and displaying certain results of the collection and analysis).
Enfish v. Microsoft Corp (Fed. Cir. 2016)では、「クレームがコンピュータの実行する方法に対してある特定の改良を規定していれば、そのクレームは適格」と判断したが、本特許は、各クレーム要素を単に機能で表現したに過ぎなく、各クレーム要素の機能を技術的な改善を伴うように規定したものでは無い。
したがって、地裁のステップ(1)に基づく判断は、適切」と判断する。

次に、ステップ(2)に基づき、このクレームがinventive conceptを規定するかを判断する。
争点のクレームは、ステップ(1)で判断されたabstract ideaに一般的なコンピュータを適用することを規定するに過ぎない。そのようなクレーム発明は、Bascom判決によれば、inventive conceptを含むものではない。
BASCOM Global Internet Services v. AT&T Mobility (Fed. Cir. 2016) (merely recite the abstract idea . . . along with the requirement to perform it on . . . a set of generic computer components do not contain an inventive concept. “An inventive concept . . . cannot simply be an instruction to implement or apply the abstract idea on a computer.)

このように、争点のクレームは、101条が規定する適格性を認めるものでは無い。したがって、争点のクレームは無効である。

6.コメント
本事件では、「従来、人が行っていたことを単にコンピュータに置き換えるクレーム発明は101条において不適格である」、と示しています。
本事件と類似な事件としては、2018年8月29日のIn re Villena (nonprecedential)があります。この事件のクレームは、不動産情報を提供するシステムに関し、「ユーザが入力した情報に基づき位置を特定し、その位置の住宅地の価格を生成し、その情報をディスプレイに表示するコンピュータ」を規定するものでした。CAFCは、この発明を以下の通り判断しました。

・争点のクレームは、不動産会社が昔から実行してきた資産評価を規定するものであり、abstract idea。
・同クレームは、このabstract ideaに周知のコンピュータ技術を使用することを規定するのみであり、inventive conceptを規定するものでは無い。
このように、従来、人が行っていたことをコンピュータにさせた発明としたとき、その発明を101条において適格なものとするためには、コンピュータの処理を向上させるためにコンピュータに何をどのように実行させたか、を規定する必要があります。

ところで、2019年1月4日に、米国特許庁は、101条に基づく適格性を判断するためのガイドラインの改正版をリリースしました。2009年1月7日が施行日です。
U.S. Patent and Trademark Office announces revised guidance for determining subject matter eligibility
https://www.uspto.gov/about-us/news-updates/us-patent-and-trademark-office-announces-revised-guidance-determining-subject
2019 Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance
https://www.federalregister.gov/documents/2019/01/07/2018-28282/2019-revised-patent-subject-matter-eligibility-guidance

この改正版では、特許庁は、以下のフローで適格性を判断します。具体的には、上述したアリスのtwo stepテストの(1)のステップに以下の(ア)、(イ)のサブステップを追加しています。
(1) 特許又は出願のクレームは、法的例外(自然法則、自然現象、抽象的アイデア)(judicial exception (laws of nature, natural phenomena, and abstract ideas))を規定しているか?この判断は以下のフロー(ア)、(イ)に基づいて実施:
(ア) 数学的コンセプト、人間の活動を組織する方法、心理的なプロセス(mathematical concepts, certain methods of organizing human activity, and mental processes)等の抽象的アイデアを規定しているか?
(イ) 法的例外を規定している場合、特許又は出願のクレームは、その法的例外を「法的例外の実務的な適用(practical application of the judicial exception)」とする追加要素が組み込まれているか?

(2) 法的例外が規定され、その法的例外に実務的な適用とする追加要素が組み込まれていない場合、その特許又は出願のクレームに発明のコンセプト(inventive concept)が規定されているか?
(1)(イ)、(2)の判断基準は、CAFC等の判決によって蓄積されている状態ですので、101条のガイドラインの更なる改訂版にてそれらの判断基準が追加されることを期待しています。(文責:山屋)

7.本判決のリンク先
http://www.cafc.uscourts.gov/sites/default/files/opinions-orders/18-1284.Opinion.2-26-2019.pdf

以上