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米国CAFC判決のご紹介:INTEGRATED CLAIMS SYSTEMS, LLC v. TRAVELERS INDEMNITY COMPANY
2019年04月12日
IPニュース
米国
INTEGRATED CLAIMS SYSTEMS, LLC v. TRAVELERS INDEMNITY COMPANY
判決日: 2019年2月22日
Nonprecedential
米国CAFC判決のご紹介:INTEGRATED CLAIMS SYSTEMS, LLC v. TRAVELERS INDEMNITY COMPANY
1.概要
Travelersは、Integratedが所有する特許に対して当事者系レビュー(Inter Partes Review)を申請。特許庁は、クレーム文言”field”を“entries created for, at least, alphanumeric data or image data”と解釈し、この解釈に基づき、争点のクレームは自明と判決。CAFCは、その解釈に同意し、自明との判決に同意した。

2.本判決を理解するためにポイントとなるキーワード
クレーム解釈

3.事件の背景と地裁判決
Integratedは、送信者(例えば、医院)から患者のX線画像および請求フォーム情報を受信者(例えば、医師のオフィス)に送信するときに、単一ファイルに統合する保険請求処理システムに関する特許を保有。実施例における単一ファイルには、複数の”field”が存在。なお、上図に赤字で”field”箇所を示しました。
Travelersは、同特許に対して当事者系レビュー(Inter Partes Review)を申請。

争点のクレームは以下の通り:
1. A method of processing digital data and images, comprising:
receiving: first data into identifiable fields to create a first set of filled identifiable fields, wherein at least one of the first set of filled identifiable fields contains at least one image; and second data into identifiable fields to create a second set of filled identifiable fields, wherein the second set of filled identifiable fields is a nonempty set, and wherein at least some of the first and second data are information that identifies the source of the first and second data;
presenting a graphic user interface (GUI) comprising a set of fields, wherein at least one of the fields of the GUI contains an image from the first set of filled identifiable fields, and wherein at least one of the fields of the GUI is filled with data from the second set of filled identifiable fields; ・・・

Integratedは、同クレームの文言”field”“data comprised of ‘label’ data and ‘content’ data”と解釈するように主張。

特許庁は、しかし、以下の明細書の幾つかの箇所の記載を基に、同クレームのクレーム文言”field”“entries created for, at least, alphanumeric (英数字) data or image data”と解釈。
Col. 10, 55–59 (at least one of the data fields is a digital attachment, e.g., a digital or graphic image)
Col. 12, 50–55 (alphanumeric characters can be entered so that, when the characters are entered in these boxes they are entered so as to fill a “field”)
Col. 33, 16–20 (some form of signature can be provided in the appropriate field)
特許庁は、この同解釈を基に「本クレームは自明」と判決。

4.争点
特許庁のクレーム解釈は適切か。

5.CAFC判決
CAFCは、特許庁の解釈に同意し、自明との判断にも同意。
CAFCは、「特許庁の解釈は、明細書の記載に基づくものであり、また、サポートされるものであるから、特許庁の解釈は適切」と判断。
Integratedは、”identifiable fields”で使用される”field”は、同じクレームの”fields of the GUI”で使用される”field”とは異なって解釈されるべき(上記クレームの下線参照)、と主張。
CAFCは、しかし、Philips判決を示し、「クレームのある文言が同一クレーム又は他クレームの同一文言と同じ意味を為すように表現されるように、普通、その文言は明細書全体にわたって一貫して使用される」と指摘。
“claim terms are normally used consistently throughout the patent” such that the usage of a term in one claim can often illuminate the meaning of the same term in both the same claim and other claims. Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303, 1314 (Fed. Cir. 2005) (en banc);
CAFCは、更に、「Integratedの「異なって解釈されるべき」という主張を支持する証拠は示されていない。特許庁の解釈は、どちらのfieldにおいても妥当な解釈」と判断。
従来文献は、この解釈に基づく”field”を伴うクレーム限定を開示する。したがって、CAFCは、特許庁の自明との判決を支持する。

6.コメント
特許クレームの解釈にあたって、クレームの文言が一般的な用語であっても、その文言を支える明細書の個々の記載を根拠としてその権利範囲が判断されます。
米国判例を十分に考慮して、クレームの文言=「意図しない解釈」となることを避けるように明細書をドラフティングすることが肝要です。しかし、実際には、できるだけ広く解釈されるように明細書を作成しますし、特許の成立の後、その文言がどのように解釈されるかは不明です。したがって、出願時又は審査経過時に「キーになる文言がある」とその折々に把握し、その文言の望む解釈を規定する従属クレームをその時点で設けることが一番の解決策な気がします。しかし、言うは易し行うは難しです。したがって、各出願の事業部、発明者から各出願の重要性を把握し、重要な出願に対して沢山のクレームを設ける、継続出願を出願し時節に合わせたクレームを継続出願に随時設ける、といった対応が現実的な解ではないか、と思っています。(文責:山屋)

7.本判決のリンク先
http://www.cafc.uscourts.gov/sites/default/files/opinions-orders/18-1142.Opinion.2-22-2019.pdf

以上